2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧
【しつこい感じ】 辞書によると「しつこい」を漢字で書くと「執拗い」だというのだけれど、「拗い」の読みは「すねい」で、すねていたり、ひねくれていることをいう。「しつこい」を「執拗い」と書くのはどうも腑に落ちない。 漱石は明治三十四年三月十二日…
【八月の地図】 この七月はまるで台風のように迷走して暮らしたなぁ……と八月の声を聞いてあらためて思う。 病気になった郷里清水の友人がいよいよいけなくなり、永遠の別れがあり、そして月末には亡き母の三回忌がやって来た。 伊達家が掘削した神田川。万世…
【夏のさみしさ】 ひとりぼっちでいる夏はさみしい。親の介護が始まると夫婦ふたりで行動する機会は奪われる。夫婦別行動でふたりそれぞれの親たちの看取りが一人またひとりと終わり、妻より一足先にひとりぼっちになったので、無人になった実家の片付けを数…
【夏の二股】 二股(ふたまた)を辞書で引くと「もとが一つで末の二つに分れたもの」と広辞苑にある。 二股というのはぼんやり眺めているだけでもおもしろくて見飽きることがない。topology(トポロジー)とか位相などというむずかしい言葉を知らなくても、…
【赤のある風景】 清水区銀座の写真館に用事があってお邪魔する朝、携帯に「 11 時 10 分に着くようにしてください」と電話があったので、頭の中で道順と歩く速度を計算し、ちょうど良い頃合いを見計らって入江南の実家を出る。 しずてつストア駐車場まで来…
【総排泄腔】 スズメに関する本を買って、拾い読みしただけで最初から最後まで通読していないことに気づいたので、一気に読み通してみたらあらためておもしろかった。 行間を読むことの大切さがしばしば説かれるけれど、行間に何か大切なものが落ちていると…
【乙鳥】 「鴻雁の北に去りて乙鳥の南に来るさえ、鳥の身になっては相当の弁解があるはず」(漱石『野分』)とあった。 鴻雁(こうがん)は鴻と雁なので鳥の種類は字から推しはかれるけれど、乙鳥ってなんだろう、乙な鳥だから人が食べて食味のよい鳥のこと…
【眼下の芝生】 車窓を一瞬過ぎて消え去る景色が眼に焼き付いて忘れられないことがある。 そういう場所を何度も通ることがあるとその瞬間を心待ちするようになり、一度でいいからあの場所に行ってみたいと思い、カメラを手にその一瞬を待ちかまえ、せめて写…
【民家の品格】 司馬遼太郎が新聞社文化部の記者だった頃、当時気象庁課長をしていた人物に連載小説の依頼をするため上京し、ものの見事に断られたという話なのだけれど、司馬遼太郎がその後も一愛読者であり続けたその人とは新田次郎のことだった。 新田次…
【ゟ(より)とヿ(こと)】 清水市史を読み通したら古い資料内に「ゟ」という文字がよく出てきて、しらべたら「より」と読む。 DATA : RICOH PX 1 : 1 format 漱石が手書きしたメモを読むと「ヿ」という文字がたびたび登場し、「独立スルノ法ハ自己ノ作物ヲ…
【扉の教え】 義父母と暮らす共同住宅。その 1 階脇にある共同ゴミ集積所への扉は、中からは鍵なしで開けられるけれど外からは鍵がないと開けられないようになっている。外部から侵入する不審者を防ぐ防犯のためだ。 エレベーターに乗ってゴミ捨てに来て、ゴ…
【夏の地鳴り】 7 月 20 日早朝、郷里静岡県清水に実家片付け帰省して目覚めた朝、近所の八幡神社でクマゼミが鳴いており、それが今年聞いたセミの初鳴きとなった。 その前日、JR 草薙駅に到着し、静岡鉄道草薙駅まで歩いたいたら街路樹から虫の声が聞こえ、…
【ばらす】 若い女性たちが「あ〜あ、ばらしちゃった」と言うと「あ〜あ、ほんとのこといっちゃった」であり、ヤクザ映画で「てめ〜ばらすぞ」と言えば「てめ〜ころされたいのか」であり、研究者が「ここはいったんばらそう」と言うと「いったんぶんかいして…
【バスを待つ間にオンリーユー】 本郷郵便局に用事があって出掛ける往路、駒込発秋葉原行きの都営バス茶 51 系統を待つ間にふと平浩二 1972 年のヒット曲「バスストップ」を口ずさんだらプラターズの「オンリーユー」に似ている。 バスを待つ間にすることが…
【ちいさな訪問者】 仕事場がある8階ベランダにときどき虫がやってくる。「小さなセミが仰向けでひっくり返ってもがいてる」と妻が言うので見たらカナブンの一種だった。ベランダ箒を差し出してやったらつかまって起き上がる。カナブンはどうしたと聞くので…
【地蔵通り商店街とはなにか】 年寄りらしい買い物をする必要が出てきた母を連れて巣鴨地蔵通り商店街へ出かけた。 数えきれないほど訪れている商店街なのに、歳をとり、病を得て、改めて訪れたこの商店街が、母にとってもう一度新鮮に映るらしい。どんな商…
【漱石の閾(いき)】 枠組を超えるということを吉本隆明は、度を越して、閾(いき)を超えて、境を超えるのだという。大胆で、率直で、そして真剣に、枠組を超えていいきってしまう、そこを漱石の偉大さといっている。 意図的に小説作品という枠組の閾を超…
【高部の案山子】 2022 年 7月 20 日、高部(たかべ)小学校にあると聞いた『かまきりじいさん』の石碑を見に行った。許可を得て校内に立ち入らなくても見られる場所にあると聞いたので、学校の周りをぐるりとまわってみたけれど見つけられなかった。 DATA :…
【 39.5 度】 一昨日の東京は、都心の大手町で午後 0 時 58 分、39.5 度を記録して 1923 年から観測を開始して以来の史上最高記録を更新したという。 午後いちばんで京橋近くの出版社まで打ち合わせに出掛けたけれど、街の空気はヘアドライヤーの熱風のよう…
【4回目】 新型コロナウイルスワクチン 4 回目接種を受けるなら 15 時 45 分に地区センターへ来いと案内が来ていたので二人揃って行ってきた。ひと通りの説明を聞いたあと「本日は飲酒をおひかえください」と女医さんが言うので「えっ!お酒飲んじゃいけな…
【チャーハンスープ考】 チャーハンのおいしい店はラーメンもおいしい……というのはおそらく真理ではない。 子どもの頃からラーメン屋に行ったらまずチャーハンを注文する。どうして同じ材料と道具でこんなにおいしいチャーハンをつくれるのだろうと驚くこと…
【「ム」と「厶」】 「ム」と「厶」の字は似ているけれども違う文字で、前者はカタカナのムだけれど後者は漢字であり、「私が……で厶います」(二葉亭四迷)などと書かれると「…でございます」と読む。 DATA : RICOH PX 1 : 1 format 芝居小屋で用いられたゴ…
【水と根性】 夏が好きなので、JR秋葉原駅で電車を降りて、仕事の打ち合わせがある銀座一丁目まで歩いた。 マラソン選手が走っている最中に水を飲む姿を初めて見た時は「あれっ?」と思ったものだけれど、東京オリンピックの頃はどうだったのだろうと調べて…
【バス停】 むかし読んだ丸山健二が急に読みたくなったと 7 月 9 日の日記に書いた。 DATA : RICOH PX 1 : 1 format 再読してみたら、読みたくなったのはこの本ではない。自分はあの頃なにを読み、なにを思い出し、急になにを読み返したくなったのだろう。 …
【漱石二冊】 吉本隆明の本は何冊か買ったけれど「読みました」と言えるような程度に読めたことがない。そして不勉強ながら夏目漱石に関する著作があったことをつい先日まで知らなかった。読んでみたい。 DATA : RICOH PX 1 : 1 format 吉本隆明『夏目漱石を…
【マイホーム山谷】 第28回小学館ノンフィクション大賞受賞作、末並俊司『マイホーム山谷』小学館 2022/5/1)読了。よかった。 他者を救うことができた同じ「価値」によって自分が救われるということが大切なのだろう。 ◉
【街の歯】 歯が抜けるという事態はさまざまな驚きに満ちている。 子どものころ歯が痛いとき、痛い歯に舌の先で触れてみるとその歯がズキンズキンと疼きながらだんだん大きくなるように感じ、自分の頭くらいに大きくなったような気がしたものである。そして…
【聞こえる】 物置にネズミが出ると騒いでいるので「猫いらずでも置いとけば」と言うと「しっ!ネズミに聞こえる」と口に指を当て、「さぁてチューちゃんたちにごちそうでもあげようかな」と祖母は大きな声で言い直していた。 DATA : RICOH PX 1 : 1 format …
【これは芸術ではない】 「アート・ディレクターとしてどう思いますか?」などと聞かれて思わずぞっとしてしまった。電話でなくて面と向かって言われたら、思わず後ろを振り向いてしまうところだった。 世の中にはそういうカタカナの肩書きで呼ばれて恥ずか…
【砂漠の流れ者】 1970年のアメリカ映画『砂漠の流れ者』の公開時は高校一年生だったはずだけれど、郷里静岡県清水の映画館でそれが公開されたかどうかは記憶にない。 数年後テレビ放映された際に観たのだけれど、とらえどころのない不思議な映画で、のちに…