◉母と歩けば犬にあたる
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……1】 01|母とオンボロ自転車 母(★1)は永年乗り続けている自分の自転車をオンボロ自転車と呼んでおり、そのオンボロ自転車はよくパンクする。 田舎暮らしをしていると、元気な年寄りの足はもっ…
" data-en-clipboard="true">清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……2】 " data-en-clipboard="true">02|土砂降りの中を歩く 8月16日土曜日、急遽清水に帰省した。 静岡県中部地方は終日激しい雨の予報で、静岡駅から乗った東海道本線…
" data-en-clipboard="true">清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……3】 " data-en-clipboard="true">03|45ウイスキー 母の病状がはっきりせず、8月27日に静岡県立総合病院(★1)で内視鏡を入れて再検査し、その日のうちに担当医の結…
" data-en-clipboard="true">清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……4】 " data-en-clipboard="true">04|遠距離と家族 8月27日、静岡県立総合病院で、一日いっぱいかけて母の精密検査が行われ、その日のうちに治療方針が決まるという…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……5】 05|誕生日の朝 静岡県立総合病院での診察結果を聞く母に付き添うため帰省した。 草薙駅前(★1)を歩くとサウナ風呂に入ったような暑さであり、この日の清水は三十八度近い全国一の最高気温…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……6】 06|入院 年寄りが驚くほどたくさんの医者にかかっている現状にあらためて驚いた。 母がバッグから次々に取り出す診察カードはものすごい量であり、愛犬の病気治療のために駆け回ったこともあ…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……7】 07|母の住所録 一ヶ月も入院するのなら、ふだん家にいたらできないことがしたい。 母からそういう前向きな発言が聴けると、家族としてはありがたい。何がしたいのかと尋ねると、届いたのに読…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……8】 08|黄昏を歩く――告知 最近の病院は患者の治療に対して本人や家族の同意書をたくさん書かせるらしい。母と同じ病院に、くも膜下出血でお母様が入院している友人もいて、偶然廊下で会ったので…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……9】 09|女と台所と冷蔵庫 女性にとって台所は城である、とたとえるのは大げさすぎる気もするけれど、人生の要とも言えるもっとも気にかかる場所の一つであることは確かだろう。 年老いて子どもに…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……10】 10|かたちあるもの 「かたちあるものはいつか必ず壊れる」が若いころから母の口癖である。 母は昔から、物を壊してしまうという過失に寛容な人で、子どもをひどく叱りつけるということがな…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……11】 11|巴川夕景 抗がん剤の投与はきついらしい。 体がだるくて起きあがるのが困難になった、嘔吐感があって食べ物も一切喉を通らないなどと言って、頑張り屋の母も辛そうである。あまりに苦し…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……12】 12|まちの死といなかの死 家族に病人が出て足繁く病院に通うようになると、人と医療の抜き差しならない関係の中で、長寿社会がきわどく維持されていることを実感する。 好むと好まざるにか…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……13】 13|人生の一番長い日 午前七時一〇分東京駅発、八時九分静岡駅着のひかり号で帰省した。 実家に帰るためには静岡駅でJR東海道在来線に乗り換え、ふた駅手前の草薙駅まで上り方向へ戻るの…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……14】 14|みんな 幼稚園児に「みんないい子でいようね」と呼びかけると、「はーい」といっせいに答え、一人の子が進み出て「○○ちゃん、いい子でいる」と言うと、次々に園児が進み出て「○○ちゃん、…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……15】 15|病室のピクニック 母の検査入院が十月十七日金曜日より、約一ヶ月の予定で始まり、翌日からの日課として、毎日昼前に病室を訪ねて昼食を一緒にとることにした。 郷里で一人暮らしの時は…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……16】 16|甘食を知っていますか? 入院した人を病室に訪ねたら、ベッドがもぬけの空だったりするのは気持ちの良いことではない。 母の病室を訪ねたらベッドが空っぽだったのでちょっとドキッとし…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……17】 17|病院に歌が流れるとき 十一月八日、母の治療が一週間遅れたために、この善き日を一緒に病院(★1)で過ごすことができた。 毎月、休診日である第二土曜日、この病院では学生、医師、看護…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……18】 18|ひとまず退院 病院の入退院は慌ただしい。ベッドの空くまで入院を待たされる人もいるからだ。 「良かったですね、明日退院できますよ」などと言われて家族は嬉しさ半分、心配半分で大慌…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……19】 19|親子の対話 人が生きていること、死ぬこととはなにかという人生最大で避けては通れない関心事の一つについて、母と話さなければならない機会が増えて来た。 病気というのも社会の決めご…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……20】 20|出清水記 年を取ったら子どもの世話にも世間さまの世話にもならず、好きな土地でひとり気ままに生きて死んで行きたい、などという夢は元気な者が抱く身勝手な希望であり、宝クジに当たる…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……21】 21|楽しい病院とはなにか 病院だって楽しく過ごせる場所であるにこしたことはない。 抗がん剤投与を受けるため化学療法室に入っていた母が笑顔で戻ってくる。ベッドで仰向けになって点滴を…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……22】 22|小春日和 慢心は絶望の母であり、平坦な道は奈落への助走路である…などという言葉が年老いた親たちの看護・介護をしていると思い浮かぶことが多い。 親たちの体調が良く、今夜は久しぶり…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……23】 23|親子の遠近法 静岡市にある県立総合病院で、夜遅くまで通路のベンチに座って延々待たされ、母と二人、絶望的な病気の告知を聞いた日のことを忘れない。 明かりの消えた廊下を歩いて守衛…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……24】 24|アホの壁 人は物事を都合良く楽観的に見たり、過剰に悲観的になったり、勝手に浮かれたりして、でっぱったりへこんだりしながら生きている。 「この病気の状態では三ヶ月、もしかすると…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……25】 25|冬の旅人 病いを癒すのを目的に見知らぬ土地に暮らしの場を変えてみるのはいいことだ。住み慣れた土地では癒されにくい病いもあるように思う。ひとはそれぞれの地域で、それぞれの生活習…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……26】 26|営食養生 人間歳をとると驚くほど食が細るものだなと思う。 親たちがたまには蕎麦屋に行きたいというので外出し、席について、「さあ、何を食べてもいいよ、何が食べたい?」と聞くと決…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……27】 27|天職 お年玉付き年賀はがきと切手の当選番号発表があり、母が新聞の切り抜きを持ってきて、当選番号を確かめたかとしつこく聞くので、確認したらお年玉切手シートが2枚当選していた。 …
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……28】 28|靴が鳴る 物心ついて初めて覚える歌は、誰かの背に負ぶわれ、腕の中に抱かれて聴かされた歌かもしれない。 覚えている最も古い歌は『あの子はたあれ』(★1)と『靴が鳴る』(★2)であ…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……29】 29|旅の原点 旅の記憶のページをめくると、それぞれの旅にさまざまな思い出が乱雑に貼られた付箋紙のように貼り付いていて、それらを一枚一枚読んでいくと、そこには楽しさだけではなく寂し…
清水←→東京・東海道みとり旅の記録 【母と歩けば犬に当たる……30】 30|あの角を曲がるまで 母と愛犬イビの毎日の散歩コース、六義園正門前の道から不忍通りへと左折する角に大きなマンションがあり、その一階角にコンクリート製の祠(ほこら)があって一体の…