den6blog’s diary

僕の寄り道――電気山羊は電子の紙を食べるか

2025-02-01から1ヶ月間の記事一覧

【檜の秋】

【檜の秋】 「与次郎の帰ったのはかれこれ十時近くである。一人ですわっていると、どことなく肌寒の感じがする。ふと気がついたら、机の前の窓がまだたてずにあった。障子をあけると月夜だ。目に触れるたびに不愉快な檜に、青い光りがさして、黒い影の縁が少…

【しるとしず】

【しるとしず】 「する」を 「しる」、「せず」を 「しず」と書いてある箇所で突っかかるのは、サ行変格活用とか未然形などという難しい決まりは忘れていても、「なんかへんだな」と感じる癖が身についているからだろう。「けれども大いに疲れた顔を標榜する…

【日が限る】

【日が限る】 日が翳るという。日が限ると漱石が書いている。「空はまた変ってきた。風が遠くから吹いてくる。広い畑の上には日が限って、見ていると、寒いほど寂しい。草からあがる地息でからだは冷えていた」(三四郎)。ネット上で「日が限る」という用法…

【かあいそう】

【かあいそう】 「Pity is akin to love. 」は諺で「哀れみは恋に近い」であると辞書の訳にある。俗謡は俗謡らしくいかなくっちゃだめだと言いながら与次郎は「少しむりですがね、こういうなどうでしょう。かあいそうだたほれたってことよ」と翻訳し、広田先…

【天長節】

【天長節】 「あくる日は約束だから、天長節にもかかわらず、例刻に起きて、学校へ行くつもりで西片町十番地へはいって、への三号を調べてみると、妙に細い通りの中ほどにある。古い家だ」(三四郎)。天長節は11月3日、明治天皇の誕生日である。三四郎は広…

【茫然と自失】

【茫然と自失】 二つの星が空間的に隣接して、互いに引力を及ぼしあい、共通重心のまわりを軌道運動しているものを連星という。子のない編集者夫婦だった友人の奥さんが亡くなられ、ご主人が一人とりのこされている。人間も連星となってこの世界を公転してお…

【ダーシ】

【ダーシ】 編集者が「ダーシ」と言う。「――」と書き、たとえば加藤周一が書いたものなどによく出てくる。欧文のダッシュのことであり中線(なかせん)ともいい、中断・転換・省略などに用いられる。いつ頃からこういう記号が日本語に取り入れられたのだろう…

【こようときよう】

【こようときよう】 三四郎をkindleで開いたら線引きがあり前回も同じ箇所に引っかかっていたらしい。「さいわいまだ新宅を訪問したことがないから、こっちから行って用事を聞いてきようという気になった」。来ようと書いて「こよう」と読むところを漱石は「…

【散歩の足取り】

【散歩の足取り】 「ある日の午後三四郎は例のごとくぶらついて、団子坂の上から、左へ折れて千駄木林町の広い通りへ出た」(三四郎)。団子坂上を左へ折れる場所に十年ほど住んでいたので目を閉じるとそこに自分もいるようだ。その道で三四郎は広田先生と与…

【漱石のふりがな】

【散歩の足取り】 漱石を読んでいたら「物価」に「しょしき」と「ふりがな」が振ってある。「しょしき」で辞書をひいたら、諸式や諸色と書いて物価のことを意味し「諸式が高くなる」などと用いるとある。類語に「諸品」があって「しょしな」と読む。「しょし…

【駒込の籠屋と鳥屋】

【駒込の籠屋と鳥屋】 『三四郎』に与次郎の名で出てくる鈴木三重吉が『文鳥』には実名で出てきて憂鬱な漱石に「鳥を御飼いなさい」と勧める。「籠はと聞き返すと、籠ですか、籠はその何ですよ、なにどこにかあるでしょう、とまるで雲を攫むような寛大な事を…

【話の水位】

【話の水位】 「ここではその詳細には立ち入らない」という文章がよく出てくる本を読んでいる。話の水位を変えるような論点を上手に避けている。読者に「話の水位を変えるような横槍を入れるなよ」と釘を刺している。水位の違う水路に船を通さなければいけな…

【文字数メモ】

【文字数メモ】 300文字の制限内で言いたいことを簡潔に述べよ、というひとり遊びを思いついたので、しばらく遊んでみようと始めたら意外にはまった。小学四年生まで下校後の外出が禁じられ、六畳ひと間のアパートに閉じこめられて過ごしたので、読んだり書…

【揺れる】

【揺れる】 強風が吹いて六義園内の樹々が激しく揺れている。鞭のようにしなって揺れる枝先に飛来した鳥たちが、枝を固く掴んでしっかりバランスをとっていて感心する。地上10階ほどの高度でする曲芸のようだ。あの鳥の名前を知りたいと思い、机の上の双眼鏡…

【たまげる】

【たまげる】 エクスタシーとは脱魂(だっこん)のことであり、脱魂を辞書で引くと「エクスタシー」だと自己言及的にそっけなく書いてある。脱魂とは魂(たましい)が抜けてしまうことである。魂が消えてしまうのでびっくりすることを「魂消る(たまげる)」…

【入射角反射角】

【入射角反射角】 太陽は自ら光を放ち地球からは相対的に位置を変えないので恒星と呼ばれる。窓から見える都心のビル群も、わが家に対して位置を変えないので恒星のように相対的にそこにある。ある季節のある時刻に、太陽から届く光が反射され、わが家の窓か…

【野川】

【野川】 ウィキペディアで「野川」を引くと「野川(のがわ)は、東京都を流れる多摩川水系多摩川支流の一級河川である。国分寺市東部の日立製作所中央研究所敷地内を水源とし、世田谷区南部の二子玉川で多摩川と合流する。全長20.5km。中流、下流域の多摩川…

【避雷針】

【避雷針】 日本海側はたいへんな豪雪で、落雷の注意報も出されている。太平洋側に生まれ育った者には雪と落雷が結びつかないのだけれど、「鰤起こし」と呼ばれる雷が冬の風物詩となっている富山で生まれ育った妻には違和感がないらしい。窓際の机から目を上…

【お座敷競技】

【お座敷競技】 新聞一面に載るクイズで、床に尻をついたままプレーするバレーボールの競技名は何と言うかとあるので「それはお座敷バレーボール」と内語で答えてみた。もちろん違う。 もちろん違うのだけれど、子どもの頃の雨の日は、狭い屋内で座ってでき…

【一瞬の「内語」】

【一瞬の「内語」】 【起】1930(昭和5)年の京都に生まれ、京都で育ち、京都大学を卒業して農学博士になられた人が書いた本を読んでいたら、一箇所だけ関西弁が出てきたのでびっくりした。 「ひょっとしたら、センニンコクにもウルチ性とモチ性のものがあ…

【筆記具を握る】

【筆記具を握る】 テレビを見ながら「最近の子どもはすごい筆記具の持ち方をするね」と話しているうちに、今では母親役をするような年齢に達した女優が、書類を書くシーンで「すごい持ち方」で筆記具を握る時代になっている。 わが夫婦の世代では、鉛筆は後…

【もうすぐ中学生】

【もうすぐ中学生】 交差点で信号待ちしていたら小学生くらいの男の子がお父さんを見上げて、「ああ、ボク王子小学校に行きたかったな……」と言うので「えっ!?」と思う。 北区立王子小学校は郷里清水に引っ越す前の六年間を過ごした歴史ある小学校だけれど…

【食をポケットに入れて・4】

【食をポケットに入れて・4】 中学時代の理科で、デンプンにアミラーゼを加えたものにヨウ素ヨウ化カリウム溶液を入れ、赤や青の色が変化するのを試験管内で確かめる……という実験をした記憶がある。 膵臓がんで食欲のなくなった母は、冷めたり冷凍したりし…

【食をポケットに入れて・3】

【食をポケットに入れて・3】 掛川在住の友人宅ではお父さんが鯖の煮物で酒(浜松の「花の舞」)を飲み、その煮汁を使ったとろろ汁でご飯を食べて仕上げをするという話を昔聞いた。 震災直後の仙台駅前で店を開けていた居酒屋に入り、仙台味噌を使った鯖の…

【食をポケットに入れて・2】

【食をポケットに入れて・2】 ケシネツツキという言葉があってご飯として食べる米を貯蔵するため精げておくことをケシネスルまたはケシネ搗くと言ったとある。この「精げる」が読めないので漢和辞典で「精」を引くと読みは漢音・呉音でセイ・ショウしかな…

【食をポケットに入れて】

【食をポケットに入れて】 日本社会で焼肉やキムチが一般的な食べ物になったのは戦後のことで、「日本の肉料理では『すきやき』や『しゃぶしゃぶ』が代表的なものであろう」と当時を振り返って書かれている。ああそうなのかと思いつつ、幼い日の記憶にすき…

【オルガニート】

【オルガニート】 開設しっぱなしになっていた妻の YouTube チャンネルをちょっとリニューアルし、以下の解説ページを追加した。 使用している楽器 《オルガニート20》 は、 箱の上面の長辺が16cm程の小さな手回しオルゴール。 穴を開けた帯状の白い紙=「…