den6blog’s diary

僕の寄り道――電気山羊は電子の紙を食べるか

▼【こまもの こまごま こまごめ日記】

【要町通り】

久しぶりに北池袋へ打ち合わせで出かけた。地下街を歩くのが好きではないので西口ですぐ地上に出る。かつて芳林堂書店があったあたりから青空の下を歩き、都道441号池袋谷原線を西北西に向かう。通称要町通りと言い、要町の手前にめざす編集事務所はある。冬…

【魂の犯罪】

星新一『声の網』に「亡霊」という作品があって「亡霊って何だろう」と横道にそれて考えるための種が読後に残る。未明の読書は飴玉探しである。考え事の種となる飴玉は、本を閉じ眼を閉じたあと頭の中で転がして楽しむおみやげである。亡霊とは死んだ者の身…

【春の笛】

この季節になると鼻や喉の奥に抜ける呼吸に異音が混じる。他人に聴こえるかどうかわからないけれど、自分の内部が立てる音なのでことさら大きく聴こえ、目が覚めると気になってうるさい。花粉という異物を排除しようとして粘液性の分泌物が出動しているのだ…

【日めくり】

時を一本の線に見立て、時間という「もの」があるように感じながら暮らしている。時計の一回転を12時間に見立てる習慣に慣れ、横軸に曜日、縦軸に週の数を置く月間カレンダーの見方にも慣れている。幼い頃に預けられていた祖父母の家の中心にあるカレンダー…

【押してみる】

押し込むと押し返す力を持つボタンがあることを、子どもの頃の室内ひとり遊びで、いろいろな道具をいじっていて知った。たいがい中にバネが入っていて、指で押してやると、押した力の分だけ跳ね返そうとしてくる。そういうものが室内のあちこちにある。洗濯…

【街ができる】

商店街に人が戻りつつあると感じたのはコロナ禍の後期、部屋にこもって逼塞していた若者たちが部屋着姿で買い物に出るようになった頃だ。妻の義姉(いとこ)などは「見たことない若者がいっぱい出てきてびっくりした」と言っていたらしい。商店街を歩く若者…

【敷石回廊】

白山通り裏を歩いていたら、旧町名で言えば指ヶ谷町から丸山福山町へと抜けて行く路地に、廃線となった都電の敷石を使ったと思われる私道があった。これだけ大量の枚数を用いた敷石回廊は珍しい。文京区役所前と白山上を結ぶ都電白山線が廃止になったのは東…

【面と線】

団子でも葛餅でも饅頭でも物体には表面がある。表面よりサーフェスと言うと洗練されて感じ、上っ面というとデスぺレートでカッコいい。言葉遊びだ。遊びを承知で「面の上には線がある」と言ってみる。そう言われたからで、正確には「その面の上にその線はな…

【捕食の整理学】

潮が引いた砂浜に無数の小さな蟹が現れ、ハサミで濡れた砂を掬っては口に運んでいる。砂の中にいる微生物を食べているのだ。不要な砂はどんどん体外に排出され、そういう一連の工程を「こしとってたべているのです」とNHKの自然番組では言う。「こしとる」と…

【そういうこと】

店頭の天幕、一般的に「テント」や「日よけ」と呼ばれるものに水が溜まって垂れ下がり、重みに耐えかねて歩道上にバシャッと落ちる瞬間がある。偶然その瞬間に下を通過するとずぶ濡れになり、何度かそういう目に遭っているので自分はそういう目に遭いやすい…

【心身合一】

ボーッとして歩きながら僅かな段差に蹴つまづいて転びそうになり、トットットッとたたらを踏んでなんとかこらえ、体制を立て直して転倒を回避し、ハッと我にかえる瞬間「我蹴つまずくゆえにわれあり」と純粋で直接的で端的に自分の存在が確信される。驚いて…

【駒込の枝垂れ梅】

本郷通り裏手に枝垂れ梅が一本ある。毎年見事な花を咲かせるこの時期になると、前を通りかかって写真を撮るのを楽しみにしている。ご近所さんに会って「枝垂れ梅が見ごろになってますね」と言うと、「え?」と驚き「どこ?」と聞く。「こっちから行って餃子…

【整理運動】

【整理運動】 整理運動は大切だ。筋肉を容赦ない勤労の世界から穏やかな福祉の世界へと軟着陸させてやらないといけないのであり、いきなりドスンとダウンするから夜中に筋肉がこわばって「いててっ!」と引きつるのだろう。勤労と福祉は表裏一体不可分であり…

【ひとりの夜に】

【ひとりの夜に】 『停電の夜に』という本があった。積読にしたまま読まずに処分されてしまったらしく記憶にない。2000年とあるから親たちの看介護中に(たぶん戸田書店で)買ったのかもしれない。ジュンパ・ラヒリというインド系アメリカ人女性小説家のデビ…

【時間調整】

【時間調整】 都営バスに乗ると停留所で時間調整がある。停留所に表示された時刻より早まらないよう、時計を見て発車を遅らせているのではないか。昔は、表示されている時刻に停留所に行くとバス通過後だったという事態に遭遇して悔しい思いをした。1時間あ…

【弥生まで】

【弥生まで】 文京区弥生にある『弥生美術館・竹久夢二美術館』まで、竹久夢二美術館で開催中の「大正ロマンの小さな美 絵封筒の世界展 ―夢二・かいちを中心に、名もなき図案家まで―」の展示を見に行った。見に行ったのは絵封筒の展示なのだけれど、入場券は…

【本を取り戻す】

【本を取り戻す】 「編集者に本は貸すな」と言い、そのココロは「貸したきり返ってこないぞ」である。確かに編集者に貸したまま返ってこない本は多く、三遊亭円龍著『円龍の下町人情味処』山と渓谷社もそのうちの一冊だ。1987年発行だから40年近く前の食べ歩…

【点と線と意味】

【点と線と意味】 文章は「点」と「線」であり単語が点で文脈が線になっている。点は位置だけあって「大きさ」がなく、線は方向だけ示して「太さ」がない。文脈によって「大きさと太さ」があるように見えているのが「意味」で、「意味」とは先へ先へと点がつ…

【映画と原作と転用】

【映画と原作と転用】 図書館から借り出した日本映画『騙し絵の牙』を観たら面白かったので原作を読み始めた。脚本化する際に解体再構築されたとウィキペディアにあり、主演をつとめた大泉洋が「私が出た映画の中で一番、私っぽくなかった」と言ったとあるの…

【建て替えパズル 】

【建て替えパズル 】 久しぶりに駒込小学校前を通ったら大師道を挟んで隣接する一角で大きな工事が進行中で、またマンションでもできるのだろうかと思う。工事現場外壁の説明板から類推すると、区が土地を借り上げて仮校舎を建設し、そこに児童生徒を移し、…

【分節ゲーム】

【分節ゲーム】 瞬間である「今」は図示すれば音符が並んでいるように切れぎれなのだけれど、点と点の間の感じ方には残像のような響きの余韻があるので、音がつながった線のうねりのように感じられる。妻が紙のロールに穴を空けて編曲している20弁手回しオル…

【犬好き猫好き】

【犬好き猫好き】 犬が好きだが、猫も好きだ。犬を可愛いと思うのと同じくらい、猫も可愛いと思う。「可愛い」と思う仕草には、犬には「犬らしい仕草」、猫には「猫らしい仕草」がそれぞれにある。世の中には「犬好きの猫嫌い」や「猫好きの犬嫌い」もいるだ…

【坂道の遺構】

【坂道の遺構】 ドナルド・キーン先生が旧古河庭園に隣接した西ヶ原一丁目のマンションに居を定められたのは1974年だったと思う。自分が大学に通うため600メートルほど離れた西ヶ原三丁目のアパートに引っ越したのがその年の春だったからで、本郷通りを歩き…

【見える見られる】

【見える見られる】 まちなかから山が見えて、山のかたちに見覚えがあると、おおよその方位がわかるが、東京二十三区内の平地から山が見えることは殆どないので、自分がいる場所における方位がつかみにくい。だが東京スカイツリーができてからは、ごくまれに…

【本とリサイクル】

【本とリサイクル】 文庫や新書などの本は古書買取りに出しても値がつかないのでどうしたらいいかなと思っていた。図書館入口近くに本棚があって自由に持って帰っていいとある。それらの中に異彩を放って講談社現代新書『現代科学思想辞典』(昭和46年)があ…

【警察署の記憶】

【警察署の記憶】 血圧の薬がなくなったので朝一番で近所の診療所へ行った。本郷通りの両側に赤色灯をともした緊急車両、こちら側に破損したオートバイ、反対側に四輪の事故車両がとまっていて、交通事故の現場検証中だった。バイクに乗っていた人は救急車で…

【聞き書き関東大震災】

【聞き書き関東大震災】 寺島珠雄『南天堂 松岡虎王麿の大正・昭和』皓星社(1999)を読んでいる。登場人物の名前と所番地の意外さが興味深く、関東大震災直前作成の地図で本郷区あたりを開きっぱなしにしている。地図があると関東大震災当時にタイムスリッ…

【「ほんこま」と「こまほん」】

【「ほんこま」と「こまほん」】 寺島珠雄『南天堂』に駒本小学校の名が出てきた。大正時代だから駒本尋常小学校の話で、昭和7年に選挙応援演説で訪れた貴族院議員井上準之助が小沼正に暗殺される血盟団事件の舞台となった。ただし現在その場所は都立向丘高…

【南天堂と中山道】

【南天堂と中山道】 『南天堂』という書店について書かれた本を読んでいる。近所に今も住んでいるし、半世紀近く前はその書店前を通って会社に通っていた。だから文章に出てくる町並みは、ありありと目に浮かぶのだけれど、地名の点が繋ぎ合わされて線になる…

【駒込のレバノンスギ】

【駒込のレバノンスギ】 六義園染井門前から染井霊園方向へ、染井橋を渡って真っ直ぐに伸びる染井通り。その左側にゴルフ練習場の『駒ゴルフガーデン』がある。敷地に折れると正面に巨木があるが、あらためて見上げると不思議な樹形をしている。感心したので…